施工例

古民家洗浄アク抜き【長野県伊那市高遠 中村家様】レポート5 土台腐食部覆い

2011年12月8日
 築300年の古民家を洗う今回の工事。お施主様も満足していただきました。「全体がきれいになると、土台の傷みが気になりますねえ」と中村様。1階には雨樋がなく、屋根から落ちる雨がはねて土台をぬらし、玄関向かって右側部分の腐食が目立っていました。
 今回は根本的な修理は不可能ですが、お施主様からの要望を受けて傷んだ部分を板で隠す処置を行いました。

(2011.10.17~20)
洗浄アク抜き前

きざみ

洗浄前の土台 板をはめこむ部分をノミと丸ノコで刻みます
 幕板用の杉材を焼き板加工し、傷んだ箇所を覆う作業。まずははめこむ部分の土台をノミや丸ノコで削ります。


部材の一部を切除 ボロボロに腐食しています
 問題の部分はまるでスポンジのような状態。今回はあくまで外見だけを取り繕う応急措置です。



刻み
用意された焼き杉板
板材カット
 覆い板は事前に寸法を測って持ち込みました。色合いや幅はバッチリです。
長さを微調整して取り付けます。
板取り付け 長さも厚さもぴったり 完了。あとは柿渋塗装
 板はビスで固定し、ダボを打ち込んで完了。焼き板の色目のおかげですでにほとんど違和感がありませんが、さらに柿渋を塗るので調和が取れます。
ただし、今回はあくまで外観を良くしただけの応急措置。根本的な解決にはなっていません。
 古民家の維持管理は個人ではとても大変なこと。新聞報道によれば、市教委様も「建物も含めた保存管理の方向を話し合いたい」とのお考えのようですので、期待したいところです。

ガラス戸修理

ガラス取り外し カッティング 交換完了
 玄関の格子戸は、ガラスが割れていたので一部を交換。
カッティングでは、カッターの刃の微妙な音に気を配りながら一気に切断します。
取りつけでは、市松模様に配置してアクセントにしました。

中村不折ゆかりの品々

屋号「環谷(たまきや)」の書 不折直筆の絵入り扇子 不折の書「山紫水明」
 こちらの「中村家」様は、洋画家・書家として知られる中村不折の母親の生まれた家で、お施主である中村様の祖父にあたる方は不折とは従兄弟の関係にあるとのこと。お宅にはゆかりの品が多く遺されています。現在、市教育委員会がこれらの調査を行っているとのこと。結果がとても楽しみです。

今回は洗浄塗装にあわせ、屋号「環谷(たまきや)」の表札をジパナーが製作することに。お宅に伝わる書をそのまま表札に刻みます。

次回は最終レポート、美しく蘇った中村家様のビフォー&アフターをお届けします。お楽しみに。

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